「リベリオ・マキナ」ミサキナギ

概要

第25回電撃小説大賞「銀賞」受賞作です。2019年2月9日発売。イラストはれい亜。

(続編も予定されているそうです!)

あらすじ

本作の舞台、ヘルヴァイツ共和国は、人類と吸血鬼が共存する国です。

また、オートマタという技術が発達している世界でもあります。オートマタとは、外見上は人間を模した自律型のゼンマイ機械です。基本的には労働力の代替をしていますが、本作の主人公「水無月」のように、特殊な人工頭脳をそなえているものもあり、会話からも人間と区別がつかないものもあります。そんな水無月ですが、所有者からの強制命令<オーダー>には逆らえません。

本作では、対吸血鬼戦闘用オートマタのうちの一つ「水無月」と、その所有者であるカノン、吸血鬼の王女リタとの交流を通じて、物語が展開します。

学校では、カノンはいじめをうけています。その原因は、彼女の母親が原因となった事件にありました。

さかのぼること10年まえ、白檀春海というオートマタ技師がいました。はヘルヴァイツ公国軍に所属するオートマタ技師であり、また、ハルミ=ビャクダン=ヘルヴァイツの名を持つ元皇太子妃でもありました。

現在でこそ人間と吸血鬼が共存しているものの、10年前までは吸血鬼との戦争が行われていました。白檀が製作した、水無月をふくむ6体の対吸血鬼戦闘用オートマタは、侵略してきた吸血鬼を倒すといった戦果をあげましたが、その後暴走し、大勢の命をうばいました。

ところで、水無月には暴走したオートマタを止めたくなる癖がありました。ある日、水無月が暴走したオートマタを破壊していると、そこにかけつけた共和国軍《赤の乙女部隊(スカーレット・メイデン)》の「リタ=ローゼンベルク」に興味をもたれ、勝負を申し込まれます。

決闘で勝利した水無月は、カノンにくわえ、リタとも行動をともにするようになりますが、ヴィルヘルムをリーダーとするヴァンパイア革命軍の陰謀に巻き込まれることになります。過去の事件の真相や、行方不明の白檀式などがかかわり、物語が展開します。

感想(内容に触れています)

本書にはいくつかのテーマがあります。

①機械はプログラムを超えることはできるか

②家族愛と疑似家族

③人間と吸血鬼、オートマタとの境界

これらのテーマがからみあって、本作を構成します。①は強制命令というシステムや、

製作者が決めた目的こそが、彼らの存在理由なのだ。

という文章と、

「生き物は学習し、成長していくものだわ。いつまでも同じではいられないのよ」

というリタの台詞の対比などで表現されています。学習・成長しうるか、という点が重要だと思います。

また、人間の自由意思も絶対ではないということも示唆されています。(吸血鬼の「魅了」)このことにより、一種の三すくみができているのですが、話がぶれるので割愛します。

つぎに②についてですが、これは①とも関連するのですが、水無月は「不適合」と判断されてコンテナで10年間の眠りにつきますが、ここで一度目的を見失っています。そのうえで、新たに目的を見つけることができるか、自己の存在理由を自分で見つけ出すことができるかが問われることになります。具体的には、周りの人の言動だったり、事件に巻き込まれるうちに徐々にそういう自覚がふかまっていくのですが、象徴的には

「――《白檀式》の真のコンセプトは愛」

という言葉が導きの糸になります。

③について、水無月は外見上人間と区別がつかず、会話をしてもそれと気づかれることはないオートマタです。(そのうえ終盤では、さらに人間との区別をあいまいにする衝撃の事実も明かされます)

また、吸血鬼と人間も見た目上は区別がつかず、体温のみで区別される点や、主要登場人物が人間、オートマタ、吸血鬼という配置であることからも、現実の世界における対立と、その融和の可能性が示唆されていると思います。

 

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